医療コーナー

健康診断について

近年、獣医学向上、飼い主の知識の向上など、動物の置かれる環境の変化により、 ペットの平均寿命が飛躍的に伸びています。しかし、動物はとても我慢強く、症状もあまり出さず、異常を感じた時には末期状態の場合が少なくありません。毎日の生活の中でちょっとした変化に気づき病気を早期に発見することが重要です。

特に、腎臓や、心臓では病気の末期状態から治療を開始する場合、治療法も限られてしまいます。早くからこの治療をすることによって進行を遅らせることは可能です。

当院では病気を早期に発見する為、健康診断を行っています。5才以上では年一回の健康診断をお勧めしています。詳細は当院へおたずね下さい。

猫

ワクチンについて

伝染病の予防

ウイルスによる伝染病の治療薬はありません。これらの伝染病から愛犬(猫)を守るためには、どうしてもワクチン接種による予防が必要です。ワクチンには、病気に対する抵抗力をつける力があります。

ワクチン注射

子犬(子猫)への注射

生後3ヶ月齢までの子犬(子猫)には母親からの免疫を持っている場合があります。この免疫を持っている間は、病気にかかりにくいという利点がありますが、同時に、この間はワクチンを接種しても効果がありません。子犬(子猫)にワクチンを接種するためには、この母親からの免疫がなくなる時期を待って行わなければなりませんが、その時期は子犬(子猫)によって個体差がありますので、2~3回あるいはそれ以上ワクチンを接種する必要があります。

ワクチン接種後に注意すること

ワクチン接種後に、すぐ抵抗力がつくわけではありません。なるべくストレスを与えないよう注意して下さい。また接種後、一時的に元気や食欲がなくなったり、疼痛、腫脹、発熱、嘔吐、下痢等を起こすことがまれにあります。また過敏な体質の犬・猫では、アレルギー反応が起こることがありますので、注意が必要です。これらの症状が認められた場合には直ちに診察を受けて下さい。

成犬(成猫)への注射

毎年1回の接種で感染あるいは発病を防ぐために必要な免疫が得られます。妊娠している犬・猫には使用できないこともあります。

ワクチンの種類

ワクチンは混合ワクチンです。当院では犬は、6種と8種ワクチンを、猫では、3種、5種とエイズワクチン(単独で、混合ワクチンではありません)をご用意しています。

免疫の持続

ワクチン接種でできた免疫の持続は約1年間です。毎年1回のワクチン接種をお勧めします。

不妊手術について

  オスの場合 メスの場合
手術方法 全身麻酔をかけて、陰嚢近くの皮膚を切開し、左右の精巣を摘出します。1泊入院で、犬は抜糸があります。猫は抜糸がありません。 全身麻酔をかけて開腹し、左右の卵巣と子宮を摘出します。1泊入院で、犬は抜糸があります。猫は抜糸がありません。
メリット 望まない交尾を避けられる
前立腺の病気、精巣や肛門周囲の腫瘍などの予防になる。
メスを追い求める発情のストレスから解放される。
攻撃的な性格や、支配性が緩和され温和になる。
マーキングしなくなる。(例外もある)
望まない妊娠が避けられる。
子宮の病気や、乳がんの予防になる。
生理や発情時のストレスなくなる。
発情に伴う体調の変化やストレスから解放される。
デメリット オス・メスに共通して
繁殖させたくなってもできません。
太りやすくなる。⇒適度な運動と適切な食事管理で予防。
精神的に幼さが残る場合がある。
ホルモン欠乏症による皮膚炎が起こることがある。⇒発生率は低い、治療法ある。

当院での、不妊手術は予約制で行っています。
発情期、体調不良のときは不妊手術は避けましょう。

フィラリア症について

フィラリアは犬の心臓に寄生する寄生虫で、蚊が媒介します。フィラリア症は死に至ることもある恐い病気です。心臓に寄生したフィラリアを駆虫するのは困難ですので、予防薬を確実に飲ませてしっかり予防しましょう!
フィラリア症の症状としては、乾いた咳、疲れやすい、お腹に水がたまる、血色尿、血を吐く等です。

  • 毎月1回の投与でフィラリア症が予防できます。
  • 予防期間は5月上旬~11月下旬までです。
  • 飲み忘れなどがあるとフィラリアに感染するおそれがあります。

※注意
フィラリアに感染している犬に予防薬を投与すると副作用があらわれることがあります。(感染していない犬にとっては安全なお薬です。)フィラリアに感染しているかは血液検査(約10分程度)で分かります。

ノミ・マダニについて

ノミという生き物

犬や猫に寄生したノミの成虫は、24~48時間後にその体の上で卵を産みます。卵は体から落下して、ペットの寝床やカーペット、畳などでふ化し、幼虫、さなぎ、成虫となり、再びペットに寄生します。そしてその成虫がまた卵を産み落とし・・・。これが何度も繰り返されるのです。
室内飼いでも安心してはいけません。散歩させるだけでも寄生することもあります。また人間が外から持ち帰ってしまうこともあります。
ノミのライフサイクルは室温が13℃以上あれば循環します。ですので、たった数匹のノミでも、ふ化を繰り返しながらどんどん繁殖し、いつのまにかノミだらけになることも。

ノミの被害

ノミアレルギー性皮膚炎、瓜実条虫症、猫ひっかき病など

ダニという生き物

やぶや草むらなどに生息するマダニは、散歩のときに寄生する機会を狙っています。少しでも緑が多い場所に近づくときには注意してください。 マダニはくちばしを刺して、セメントのようなもので固定するため、簡単には取れません。ですので無理に取ろうとしてはいけません。無理に取ると、化膿したり、病原体をうつす危険性があります。

マダニの被害

犬バベシア症、猫ヘモバルトネラ症など

あなたのペットは大丈夫?

  • 外で遊ぶことが多い。
  • 首や背中に、黒い小さな粒のようなモノがついている。
  • 皮膚に湿疹ができている。
  • 季節の変わり目でもないのにやたらと毛が抜ける。
  • 体をかきむしったり、噛んだりしている。

上記のような症状があったら、ノミが寄生しているかも・・・。

定期的な予防が大切です。

1回ノミを駆除しても、まだ環境中に卵や幼虫が潜んでいる場合があります。また、散歩中に新たに寄生されてしまうこともあります。ですので、ノミがいなくなっても継続して予防し続けることが大切です。

当院では、ノミやダニ等の駆除薬をご用意しています。食べさせるタイプや直接皮膚にたらすタイプなどがありますのでご相談ください。

ワンちゃん・ネコちゃんのシニア期に起こる身体の変化について

イヌ、ネコ

ワンちゃん・ネコちゃんは7歳くらいからシニア期(高齢期)に入ります。
見た目には若いときとあまり変わりがなく元気に見えても、歳をとるとワンちゃん・ネコちゃんの身体には様々な変化が起こります。

例えば回復力が低下して傷の治りが遅くなったり、疲れやすくなったり、免疫力が低下することで細菌やウイルスに感染しやすくなったり、腫瘍ができやすくなったり…。環境の変化に適応する力も落ちてくるので、食欲や感情が不安定になることもあります。筋肉量や関節機能が低下してくると、運動能力や体力が衰えてきますし、基礎代謝量の低下によって肥満になりやすくなります。聴力・嗅覚・視力の低下などは飼い主さんが気付きやすい変化かもしれません。年齢だけではなく、日頃の行動から身体の変化を見つけるように心がけましょう。変化の内容によっては老齢性疾患のサインである場合もあります。

老齢性疾患のサイン 可能性のある疾患
目が白く濁ってきた 白内障
歩き方がぎこちない 関節の病気
散歩に行くとすぐ疲れて息があがる、咳をする 心臓病
水をたくさん飲む、尿の量も増えた 腎臓病、糖尿病、副腎の病気など
夜鳴きなど、混乱するような行動が増えた 認知症

老齢性疾患は早期に発見し、効果的な治療を行うことにより進行を遅らせることが期待できます。そのためにも定期的な健康診断をおすすめします。

ワンちゃん・ネコちゃんが長生きするための7ヵ条

その1 ワクチン接種・フィラリア予防

基本中の基本です!防げる病気は防ぎましょう。

その2 避妊・去勢手術

子供を産ませないなら手術を。いろいろな病気のリスクを減らせます。

その3 太らせない

肥満は万病のもとです。

その4 正しい食生活

医食同源。体は食べた物からできています。

その5 歯石を溜めない

ペットも歯が命です!小型犬の場合、心臓病のリスクも減らせます。

その6 ストレスを少なく

正しいコミュニケーションやしつけは、余分なストレスを減らします。

その7 定期的な健康診断

9歳までは年に1回、10歳を過ぎたら年に2回の健診をおすすめしています。

心臓病について

心臓は生命の維持に必要な血液を全身に送り出す重要な臓器です。血液の循環は一方通行です。

1.先天性心臓病

生まれたときにすでに解剖学的な異常を持っている心臓を指します。動脈管開存症、心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、肺動脈狭窄症、大動脈狭窄症が一般的です。内科的に維持しますが、重症になれば、外科的処置になります。手術は非常に高度な技術を要するので国内の施設は数ヶ所しか実施できるところはありません。

2.フィラリア症

心臓内に寄生する寄生虫によって様々な症状が出る非常に恐い病気です。蚊が媒介することで感染します。放置すれば、心臓はもちろん肝臓、腎臓にも障害を引き起こし、死に至る場合もあります。
予防は、蚊の発生がある5月上旬~11月下旬まで毎月1回予防薬を飲ませることです。薬のタイプはいろいろありますが、確実に投与しましょう。

3.弁膜症

心臓内にある4つの弁(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)が何らかの原因で閉まらなくなったり、狭くなったりする病気です。犬の場合、僧帽弁の閉鎖不全が多くみられます。

僧帽弁閉鎖不全症

完全に弁が閉鎖できず、心臓が収縮する際、全身へ拍出されるべき血液の一部が弁の隙間から左心房へ逆流する状態をいいます。軽度の場合は、心雑音が聞こえるだけですが、進行すると肺のうっ血や肺水腫により、咳が出たり呼吸困難になったりします。こうなると非常に危険な状態で放置すると死亡します。早期に治療を開始することにより、症状を改善しますし、延命することも可能です。

4.心筋症

心筋の厚さや働きの状態によって、大きく4つに分けられます。

肥大型心筋症

心筋がどんどん厚くなり、内腔が狭くなっていきます。

拡張型心筋症

心筋の厚さが薄くなり、心臓の収縮力が低下し内腔が大きくなってしまいます。

拘束型心筋症

心臓の内側(内膜)が堅くなり、うまく広がらなくなり、働きが低下します。

不整脈源性右室心筋症

不整脈を主体とし、右心不全や突然死を引き起こします。

こんな様子が出たら要注意!

  • 呼吸が早くなったり、呼吸が苦しそう、舌の色が紫色になっている。
  • のどにものが詰まったようなしぐさの咳をする。
  • 散歩中に立ち止まって、あまり歩きたがらない。
  • 食欲が低下し、痩せてきた。
  • お腹周りが膨らんできた。
  • 歩いているとき、突然ふらついて倒れたことがある。

少しでも上記のような症状がみられたら、ご相談ください。心臓病は進行性の病気ですから、早期に発見、治療を開始することが重要です。

腎臓病について

腎臓は一対の臓器で、特に大切なのは体の血液を濾過して尿をつくることです。この尿によって体にとって不必要な老廃物が排出され、体の中に毒素がたまらないようにしています。他にも、水分の調節、電解質のバランス調節、造血ホルモンの分泌、血圧の調節等、生きていく上でとても重要な働きをしています。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があります。

急性腎不全

腎臓の働きが急激に、短期間で低下した状態です。早急に原因をみつけ、積極的な治療を行えば、腎機能の回復を望める場合もありますが、進行が早く、死亡する場合もあります。回復しても慢性腎不全に移行する場合もすくなくありません。

慢性腎不全

病気が慢性的に進行することによって長い時間をかけて機能が低下し、「腎臓の働き」が徐々に失われていきます。最もよく見られる症状は

  1. 水をたくさん飲む。
  2. 尿の回数が増える。
  3. 吐くことがよくある。
  4. 最近食欲がなく、痩せてきた。
  5. 口が臭い

等です。

慢性腎不全は残念ながら完全に治ることはありません。しかし、治療を開始することで腎機能が悪化していく速度を抑えることができます。残っている正常な腎臓の組織にできるだけ負担をかけないようにすることです。

治療法

  • 食事療法
  • 血圧を下げる降圧剤
  • 造血ホルモンの投与
  • 毒素を便とともに排出する吸着剤
  • 輸液療法

等です。

早期発見・早期治療が重要です。